キャリアアップ助成金の計画書とは何か?書き方と提出の流れ
キャリアアップ助成金の計画書とは、非正規社員を正社員化・処遇改善する計画を事前に示す書類です。取組内容を記載し、実施前に労働局へ提出・認定を受ける流れとなります。


補助金・助成金を専門とする行政書士として、補助金申請サポート実績300社以上を有する。 慶應義塾大学卒業後、大手製薬会社での経験を積んだ後、栃木県・兵庫県に行政書士事務所を開業。『事業再構築補助金』、『ものづくり補助金』、『IT導入補助金』をはじめ、地方自治体を含む幅広いジャンルの補助金に精通。リモートを中心に全国の事業者の補助金申請サポートを行っている。
この記事の結論3点
- キャリアアップ助成金は、非正規雇用者の正社員化と処遇改善を支援する制度
- 計画書は助成金対策だけでなく、企業の人材育成方針を明確にする大事なツール
- キャリアアップ計画書は実施前提出が必須で、未提出・提出遅れは不支給となる
キャリアアップ助成金の計画書に関するFAQ
Q1. キャリアアップ計画書は何回まで提出できますか?
A. 1事業所につき原則1つの計画書で複数の対象者をまとめて申請できますが、追加施策を行う場合は新たに計画書を提出することも可能です。
Q2. 個人事業主でもキャリアアップ助成金は利用できますか?
A. 雇用保険適用事業所であれば、法人だけでなく個人事業主も申請可能です。
Q3. 計画書を提出したら必ず助成金はもらえますか?
A. いいえ。計画書の提出はあくまで前提条件で、実施内容や賃金要件、申請期限を満たさなければ不支給となるでしょう。
Q4. 対象者が退職した場合はどうなりますか?
A. 支給要件を満たす前に退職した場合、その対象者分の助成金は支給されません。
Q5. 助成金の支給までどれくらい時間がかかりますか?
A. 申請後、審査を経て通常は数か月程度かかるため、資金繰りは余裕をもって計画してください。
キャリアアップ助成金とは何か
キャリアアップ助成金の、制度の目的と概要について説明します。
キャリアアップ助成金は、非正規雇用労働者のキャリアアップを促進し、労働環境の改善を図るために設けられた公的な助成金制度です。
この制度の主な狙いは、非正規雇用者(アルバイト、パート、派遣社員など)が正社員に転換されることを支援し、処遇を改善することです。
これにより、非正規雇用者の雇用の安定性を高め、企業の人材確保や生産性向上を図ることが期待されるでしょう。
具体的には、
- 賃金を引き上げる
- 企業が非正規雇用者を正社員に転換する
といった取り組みを行うと、キャリアアップ助成金が支給されます。
キャリアアップ助成金を活用することで、企業は人材の定着率を向上させ、経営の安定を図ることが可能です。
また、非正規雇用者にとっても、正社員としての雇用が得られることで、長期的なキャリア形成が可能になるでしょう。
計画書はなぜ必要?
キャリアアップ助成金を受け取るためには、キャリアアップ計画書を事前に作成し、所轄の労働局に提出しなければなりません。
キャリアアップ計画書は、企業がどのような取り組みを行うかを示すものであり、支給を受けるための欠かせないステップです。
計画書を提出しない場合、助成金の支給対象外となってしまうでしょう。そのため、事前の提出は必須です。
計画書には、
- 実施時期
- 取り組みの内容
- 正社員化の具体的な目標
などを明記します。
これにより、労働局は企業の取り組みが助成金の要件を満たしているかどうかを判断します。
計画書の提出は、助成金を受け取るための第一歩であり、適切な準備が必要です。
計画書を提出することで、企業は助成金を受け取るための基盤を築くことができ、取り組みの進捗を管理するための指針ともなるでしょう。
このように、キャリアアップ助成金は、非正規雇用者の待遇改善を促進するための大事な制度であり、計画書の提出はその実施において不可欠な要素といえます。
参考:キャリアアップ助成金
キャリアアップ助成金の計画書の役割と重要性は何?
出典:キャリアアップ計画書の記入例とは?キャリアアップ助成金を申請しよう!
キャリアアップ助成金を申請するうえで、もっとも大切な書類のひとつが、キャリアアップ計画書です。
この書類は、助成金を受け取るためのスタート地点となるものであり、提出を怠ると、支給が受けられなくなる恐れもあります。
以下では、その役割と重要性を詳しく解説します。
申請前に必ず提出する書類
キャリアアップ助成金は、非正規雇用者のキャリアアップを計画的に支援するという目的で作られた制度です。
そのため、取り組みを実施する前に、
- どんな制度を導入するか
- どの従業員を、いつ、どのように正社員化するか
などについて、あらかじめ書面で明確にしておかなければなりません。
このとき、事前に立てる計画が、まさにキャリアアップ計画書です。
このように、助成金の申請を行う前に必ず提出しなければならない重要な書類です。
提出先は、事業所の所在地を管轄する都道府県労働局またはハローワーク。この段階では、実際に転換や制度変更が完了している必要はありません。
出典:ハローワークに通う人 のイラスト
大切なのは、これからこのような取り組みを実施しますと、国に対して事前に伝えることです。
キャリアアップ助成金の実施計画を明確にするためのステップ
計画書を作成する目的は、単に手続きをこなすためではありません。企業が自社のキャリアアップ方針を明確化することです。
キャリアアップ計画書には、次のような項目を具体的に記入します。
- 改定後の賃金水準
- 正社員転換や賃金改定の実施時期
- 就業規則・賃金規定の見直し有無
- 教育訓練や制度導入のスケジュール
- 対象となる労働者の人数や雇用区分
これらを明確に書き出すことで、企業は、
- いつ
- 誰に対して
- どのように
キャリアアップ施策を実施するのかを整理できるでしょう。
計画書を作ることは、単なる助成金目的ではありません。従業員の成長と、職場環境の改善を両立させるための具体的な行動計画が明確になります。
また、労働局側もこの計画書をもとに、この取り組みが助成金の支給対象に該当するかを事前に確認しやすくなるでしょう。
出典:【公式】組織情報
計画書は企業と行政のいわば、約束書のような役割を果たします。
キャリアアップ助成金の計画書未提出による不支給の事例
キャリアアップ助成金を受け取るための手続きでは、
- 計画
- 実施
- 申請
という順番が厳密に定められています。
そのため、計画書を提出しないまま正社員転換などを実施してしまうと、たとえ条件を満たしていても、助成金が支給されません。こうしたケースは、実際に多く発生しています。
たとえば次のようなケースでは、助成金が支給されない可能性があります。
- 提出日が実施日より後の日付になっていた
- 非正規社員を正社員にしたあとで計画書を提出した
- 就業規則の改定を先に行ってしまい、計画届をあと回しにした
- 転換予定日より前に転換が完了しており、スケジュールが計画と合わない
このような場合、労働局から計画的なキャリアアップではないと判断され、申請を受理してもらえなかったり、支給決定が取り消されたりします。
特に注意したいのは、転換日と計画書提出日の前後関係です。転換や制度導入を行う前日までに計画書を提出し、受理されていることが支給の必須条件です。
まとめ
キャリアアップ計画書は、単なる提出書類ではなく、助成金の支給を受けるための前提条件であり、企業のキャリアアップ方針を明確にするための計画書です。
- 実施前に提出しなければ、どんなに条件を満たしても不支給になる
- 行政とのトラブルを防ぎ、確実に助成金を受け取るための第一歩となる
- 具体的な実施内容を明文化することで、企業内での進行がスムーズになる
これらを意識して作成・提出することが、キャリアアップ助成金を確実に受け取る最大のポイントです。
参考:キャリアアップ助成金 必要書類チェックリスト
キャリアアップ助成金の計画書の書き方
ここからは実践編です。
キャリアアップ計画書は、キャリアアップ助成金を受け取るために必要な書類であり、企業が非正規雇用者を正社員に転換する際の具体的な計画を示すものです。
以下に、基本項目や記入の注意点、参考リンクについて詳しく説明します。
基本項目
キャリアアップ計画書には、以下の基本項目を含めましょう。
対象者
正社員に転換する非正規雇用者の具体的な名前や職務、雇用形態を記載してください。対象者は、契約社員やパートタイムの従業員などです。
転換時期
正社員化を実施する具体的な日付や期間を明記してください。
たとえば、2025年4月1日から正社員化を開始するといった具体的なスケジュールが求められます。
実施内容→ 正社員化に向けた具体的な取り組み内容を記載。どのように対象者を正社員に転換するかを詳細に説明しましょう。
例)
研修の実施や業務内容の見直し
賃金条件→正社員化後の賃金について、具体的な金額や引き上げ率を記載してください。
たとえば、正社員化後、基本給を月額30万円に設定するといった具体的な条件が必要です。
キャリアアップ助成金の計画書に記入する際の注意点
計画書を作成する際には、以下の注意点を守ってください。
曖昧な表現は避ける
計画書には具体的かつ明確な表現を使用し、誰が読んでも理解できるよう、明確に記載しましょう。具体的な行動を示すことが求められます。
例)
×業務改善を行う
↓
〇業務フローを見直し、効率化を図る
整合性のあるスケジュールを立てる
計画書内のスケジュールは、実施内容や対象者の状況と整合性が取れている必要があります。
たとえば、研修の実施日と正社員化の転換日が矛盾しないように注意してください。
見本やテンプレートの参考リンクを活用する
キャリアアップ計画書の作成にあたっては、厚生労働省の公式サイトから最新の様式や記入例をダウンロードすることが可能です。
以下のリンクを参考にしてみましょう。
参考:【厚生労働省】キャリアアップ助成金 申請様式ダウンロード
こちらのページでは、キャリアアップ計画書の様式や記入例が提供されています。最新の情報を確認し、適切な様式を使用してください。
このように、キャリアアップ計画書は助成金を受け取るための大事な書類であるため、正確かつ具体的に記入しましょう。計画書の作成にあたっては、十分な準備と注意が必要です。
キャリアアップ助成金の計画書提出の流れと期限
出典:【公式】キャリアアップ助成金
キャリアアップ助成金の計画書は、申請の第一歩となる大切な書類です。
提出先やタイミングを誤ると、せっかく制度を利用しようとしても不支給になる恐れがあるため、手順を正しく理解しておきましょう。
まず、提出先は原則として、事業所の所在地を管轄する都道府県労働局またはハローワーク(公共職業安定所)です。
地域によっては受付窓口が異なる場合があるため、前に確認しておいてください。
次に、提出のタイミングが大切です。
キャリアアップ助成金では、たとえば、
- 賃金規定を改定する
- 有期契約社員を正社員に転換する
といった具体的な取り組みを行う前に、キャリアアップ計画書を提出しなければなりません。
制度の実施後に提出しても遅く、助成金の対象外になってしまいます。
では、提出後にやむを得ない事情で計画内容を変更したいという場合は、どうすればいいでしょうか。
例)
- 対象者の人数が変わる
- 転換時期を延期したい
上記のようなときは、変更届を提出すれば修正が認められる場合があります。
ただし、変更理由が不明確な場合や、実施前に連絡していない場合には認められないことがあるので、注意しましょう。
キャリアアップ助成金申請でよくあるミスと不支給リスク
キャリアアップ助成金は魅力的な制度ですが、ルールが細かいためミスが多いのが現状です。
特に以下のような点に注意しましょう。
転換後に計画書を出してしまう
最も多いミスがこれです。
有期社員を正社員にしたあとで、計画書を提出しても大丈夫だろうと思ってあとから出すと、不支給になります。
助成金はあくまでこれから実施する取り組みを支援する制度であり、事後申請は認められません。
対象者の雇用区分や賃金が計画書と一致しない
- 賃金の上げ幅が計画と異なる
- 「Aさんを正社員へ転換」と記載したのに、実際には別の人に転換している
こうした場合も不支給の対象です。
特に、転換後の基本給が5%以上アップしているかなど細かい条件があるため、事前の確認が欠かせません。
提出先・書類不備による差戻し
提出先を間違えたり、添付書類(就業規則・賃金台帳・雇用契約書など)が不足していると、書類が差し戻されてしまい、期限を過ぎるケースがあります。
書類の不備は想定以上に多いため、提出前に社会保険労務士(社労士)など専門家にチェックしてもらうと安心です。
キャリアアップ助成金申請は社労士に依頼するのがおすすめ?
出典:社労士/社会保険労務士|会社|企業|社員 - ピクトグラム|フリー
キャリアアップ助成金の申請は、書類の量が多く、条件も細かく設定されています。
中小企業の担当者が本業の合間にすべて対応するのは、かなりの負担です。そのため、多くの企業では社労士に依頼しています。
社労士に依頼するメリットは、大きく3つ挙げられます。
書類作成・提出代行による時間短縮
社労士は、キャリアアップ助成金の手続きに慣れています。
必要書類の作成や提出を代行してくれるため、経営者や人事担当者は本業に専念できるでしょう。
特に、初めて申請する場合は大きな時間節約になるはずです。
不支給リスクの回避
制度の条件や提出期限を守ることが助成金受給のポイントですが、社労士はどこでつまずきやすいかを熟知しています。
たとえば、就業規則の改定方法や賃金引き上げ率の設定など、細かい部分をチェックしてくれるため、不支給になるリスクを事前に防ぐことが可能です。
最新情報に対応できる
助成金の制度は、年度ごとに変更されることがあります。
社労士は厚生労働省の最新情報を常に確認しており、2025年度版の条件や金額にも対応可能です。
自社で、古い情報のまま申請してしまうという心配がないのは、大きなメリットです。
まとめ
キャリアアップ助成金の計画書は、ただの申請書ではなく、助成金を受け取るためのスタートラインです。
提出先・期限・内容を正しく理解し、早めに準備することで、不支給リスクを避けられるでしょう。
社労士に依頼するのも有効な方法で、ミスを防ぎながら確実に受給を目指すことが可能です。
制度を上手に活用すれば、企業にとっては人材定着の強化とコスト削減の両方が叶います。
計画書の提出をどうすればいいかわからない場合は、迷わず専門家に相談してみましょう。
おわりに
キャリアアップ助成金は、単なる経済的支援制度ではなく、企業と労働者がともに成長していくための仕組みです。
少子高齢化や人手不足が深刻化する中で、非正規雇用者を正社員へ転換する取り組みは、企業の持続的な発展に欠かせないテーマといえるでしょう。
その第一歩となるのが、キャリアアップ計画書です。
この書類は、助成金の申請に必要なだけでなく、企業が自らの人材育成方針を明確化し、経営の方向性を整理する機会にもなるはずです。
計画書を作成することで企業は、
- 誰を
- いつ
- どのように
正社員化するのか、またその後の処遇改善や教育体制をどう整えるのかといった具体的な道筋を可視化できます。
これにより、労働者にとっても、自分の努力がどのように評価され、どんな未来が待っているのかが明確になるでしょう。
結果的に、労働者のモチベーション向上にもつながります。
計画書は企業と従業員の双方にとって信頼関係を築く土台であり、単なる行政手続きにとどまりません。
一方で、提出のタイミングや内容の誤りによって、助成金が不支給になるケースも多く見られます。
不支給にならないためには、下記の2点が不可欠です。
- 計画→実施→申請という順序を守る
- 内容を具体的かつ整合性のある形で記載する
もし制度や様式に不安がある場合は、社会保険労務士などの専門家に相談してみましょう。書類不備やスケジュールのずれを防ぎ、確実な受給につなげることが可能です。
キャリアアップ助成金は、非正規雇用者の地位向上とともに、企業が人材育成を通じて競争力を高める絶好のチャンスを提供する制度です。
大事なのは、助成金をもらうための手続きとして認識するのではなく、人を育て、企業を育てる仕組みとして活用する視点を持つことです。
計画書の作成をきっかけに、自社の人材戦略を見直し、従業員一人ひとりが安心して長く働ける環境づくりを進めていきましょう。それが企業の信頼を高め、持続的な成長へとつながる最も確実な道です。
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監修者からのワンポイントアドバイス
キャリアアップ助成金は、大変人気のある助成金となります。キャリアアップ助成金の第一歩となるキャリアアップ計画書の作成は企業にとっても働く人にとっても重要な位置づけを占める書類となります。キャリアアップ助成金が不支給といったことにならないためにも社労士などの専門家に相談されると良いでしょう。

