キャリアアップ助成金正社員化コースの申請の流れを解説
キャリアアップ助成金の正社員化コースは、 ①計画届を事前に提出し、 ②正社員転換と賃金アップを実施、 ③6か月継続雇用後に申請書を提出し、 ④審査を経て支給される流れです。


補助金・助成金を専門とする行政書士として、補助金申請サポート実績300社以上を有する。 慶應義塾大学卒業後、大手製薬会社での経験を積んだ後、栃木県・兵庫県に行政書士事務所を開業。『事業再構築補助金』、『ものづくり補助金』、『IT導入補助金』をはじめ、地方自治体を含む幅広いジャンルの補助金に精通。リモートを中心に全国の事業者の補助金申請サポートを行っている。
本コラムの結論3つ
- 事前計画と書類整備、期限管理が受給成功のカギ
- 正社員化コースは助成額が大きく、人材定着と経営安定に効果的
- キャリアアップ助成金は、非正規雇用の正社員化と処遇改善を支援する制度
キャリアアップ助成金正社員化コースについてのFAQ
Q1. キャリアアップ助成金は他の助成金と併用できますか?
A. 内容が重複しなければ、ほかの雇用系助成金と併用できる場合があります。
ただし、同一の正社員化や賃金改善について二重受給はできないため、事前確認が重要です。
Q2. 助成金は課税対象になりますか?
A. はい、原則として法人税・所得税の課税対象となります。受給年度の収益として計上しましょう。
Q3. 正社員化後に配置転換や職種変更をしても問題ありませんか?
A. 大幅な職務内容の変更は、実質的な正社員化と認められない可能性があります。変更する場合は合理性と記録を残すことが重要です。
Q4. 受給後に返還を求められるケースはありますか?
A. 虚偽申請や要件未達が後から判明した場合、返還や今後の助成金利用制限が課されることがあります。
Q5. 助成金を活用すると会社の評価に影響しますか?
A. 助成金活用は人材育成に積極的な企業として、金融機関や求職者からの評価向上につながることがあります。
キャリアアップ助成金とは
出典:キャリアアップとは何か?
キャリアアップ助成金は、厚生労働省が実施する制度で、中小企業が非正規雇用労働者のキャリアアップを支援するための助成金です。
この制度は、有期雇用やパート、派遣などの非正規労働者を正社員や無期雇用に転換する企業を対象としています。
キャリアアップ助成金の目的とは何か
この助成金の主な目的は、非正規雇用労働者の雇用の安定を図り、処遇を改善することです。
企業が非正規労働者を正社員化することで、労働者の意欲や能力向上が期待され、結果として企業の生産性向上にも寄与します。
コースの種類
キャリアアップ助成金にはいくつかのコースがあり、具体的には以下のようなものがあります。
正社員化コース
非正規雇用労働者を正社員に転換した場合に支給される助成金です。
賃金規定改定コース
非正規雇用労働者の基本給を増額した場合に支給されます。
健康診断コース
労働者の健康管理を目的とした取り組みを行った場合に支給される助成金です。
これらのコースを通じて、企業は非正規雇用労働者の処遇改善やキャリアアップを図ることができ、同時に助成金を受け取ることが可能です。
これにより、企業は優秀な人材を確保し、労働環境を向上できるでしょう。
参考:キャリアアップ助成金
キャリアアップ助成金正社員化コースの基本情報
出典:【正社員よりも○○の時代】「契約社員」と「派遣社員」のワークスタイルを伝授します!
キャリアアップ助成金の中でも、正社員化コースは非正規雇用の従業員を正社員として雇用する事業主を支援する制度です。
非正規雇用者の安定雇用と企業の人材定着を目的としており、中小企業を中心に多くの事業者が活用しています。
対象者は誰になる?
このコースの対象は、
- 派遣社員
- 契約社員
- パートタイマー
- 有期雇用契約の社員
など、正社員以外の労働者を対象としています。
現在非正規雇用として働いている従業員を、一定の条件のもとで、正社員(正規雇用)として登用した事業主が申請可能です。
対象となる従業員には、契約期間や勤務日数に応じて条件が細かく設定されていますが、基本的には6か月以上勤務している非正規雇用社が多くのケースで対象となります。
助成額はいくら?
正社員化コースの最大の魅力は、登用した従業員1人あたりの助成金額が大きいことです。
具体的には以下の通りです。
有期契約社員から正社員に転換した場合
- 基本助成額→1人あたり57万円
- 生産性要件を満たしている→72万円
無期契約社員から正社員に転換した場合
- 基本助成額→1人あたり28.5万円
- 生産性要件を満たしている→36万円
生産性要件とは、転換後の従業員の賃金や労働条件の改善によって、事業の生産性が一定以上向上したことを証明するものです。
この要件を満たすと、助成金がさらに増額されるため、より高額の支援を受けることが可能です。
助成対象期間と上限人数
助成金の支給対象となるのは、正社員化を実施してから一定期間(原則6か月以上)継続雇用した従業員です。
ただ正社員として雇用契約を結ぶだけではなく、転換後も安定して雇用を継続することが、助成金支給の条件となります。
また、1回の申請で支給される助成金の対象人数には上限があります。
事業規模や年度によって異なりますが、多くの場合は最大20人程度までが助成対象とされています。それ以上の場合は複数回に分けて申請する必要があります。
まとめ
このように、正社員化コースは、非正規社員を正社員化することで企業の安定雇用を促進し、事業主には高額の助成金を支給する制度です。
特に、非正規社員の定着率アップや採用コスト削減にもつながるため、積極的に活用する価値があるでしょう。
参考:人材開発支援助成金について
キャリアアップ助成金の申請条件
正社員転換後6か月以上継続雇用している
助成金を受けるためには、非正規雇用労働者を正社員に転換した後、その労働者を6か月以上継続して雇用してなければなりません。
この期間中に離職が発生すると、助成金が支給されない可能性があります。
したがって、転換後は労働者が安定して働ける環境を整えましょう。
賃金規程・就業規則の整備が行われている
正社員化に伴い、賃金規定や就業規則の整備が求められます。
具体的には、正社員としての待遇を明確にするために、就業規則に正社員転換制度を明記する必要があります。
また、正社員化前と後での賃金や労働条件の違いを明確に示さなければなりません。
これにより、労働者がどのように処遇改善されたのかを証明できます。
転換前と後で処遇改善(賃金アップなど)がある
助成金を受けるためには、正社員化前の賃金と比較して、正社員化後の賃金が3%以上増額されていることが必要です。
この処遇改善は、単に名目上のものであってはならず、実際に労働者が受け取る賃金が増えてなければなりません。
これにより、労働者のモチベーションアップや、企業の生産性向上が期待されます。
転換日は雇用契約書などで明確に示すしましょう。
正社員への転換日は、雇用契約書や労働条件通知書などの文書で明確に示さなくてはなりません。
この書類は、転換が実施されたことを証明するための重要な証拠です。
したがって、転換日を記載した正式な文書を用意しておきましょう。
転換実施前にキャリアアップ計画書を提出する
助成金を申請するためには、転換実施前にキャリアアップ計画書を提出します。
この計画書には、
- 正社員転換後の処遇改善について
- どのように非正規雇用労働者を正社員に転換するか
といった具体的な計画を記載します。
労働組合などの意見を聞いて作成することがおすすめです。
キャリアアップ助成金に申請するときの注意点
出典:【厚生労働省】「多様な正社員」制度導入支援等事業
正社員化コースで申請するには、いくつか注意点があります。
書類の不備に注意しよう
助成金の申請には多くの書類が必要です。書類に不備があると、助成金が支給されない恐れがあります。
申請書類には正確に記入し、必要な添付書類を漏れなく揃えましょう。
特に、
- 出勤簿
- 賃金台帳
- 雇用契約書
などは、正社員化前後の比較ができるように整備しておく必要があります。
申請期限を守る
正社員化後、6か月分の賃金を支給した翌日から、2か月以内に申請しなければなりません。
この期限を過ぎると、助成金の申請ができなくなるため、スケジュール管理をしっかり行いましょう。
労働基準法を遵守する
助成金を受けるためには、労働基準法を遵守していることが前提です。
法令違反がある場合、助成金の支給が拒否される恐れがあります。
したがって、日々の労働条件や労働環境の整備を怠らないようにしましょう。
不正受給をしないこと
当然ですが、キャリアアップ助成金は適正に申請しなければなりません。
不正受給が発覚した場合、助成金の返還や罰則が科されることがあります。
正当な理由なく、虚偽の申請を行うことは厳禁です。
専門家の相談を活用する
出典:社労士を知る
助成金の申請は複雑な手続きが多く、専門的な知識が必要です。
必要に応じて、社会保険労務士などの専門家に相談することをおすすめします。
これにより、申請の成功率を高めることが可能です。
まとめ
キャリアアップ助成金は、非正規雇用労働者の正社員化や処遇改善を促進するための重要な制度です。
申請には、
- 賃金の増額
- 就業規則の整備
- 正社員転換後の継続雇用
など、いくつかの条件が求められるでしょう。
申請時には、書類の不備がないようにし、期限を守ってください。
これらの条件をしっかりと理解し、適切に手続きを行うことで、助成金を有効に活用できるでしょう。
参考:人材確保等支援助成金のご案内
キャリアアップ助成金・正社員化コースの申請の流れ
キャリアアップ助成金の正社員化コースを活用するためには、いくつかの手順を踏む必要があります。
助成金は事前に計画を提出し、実施・継続雇用を確認した後に申請する仕組みになっています。
ここで流れを理解しておきましょう。
キャリアアップ計画書を作成・提出する
まず、事業主はキャリアアップ計画書を作成し、事前に所管の労働局またはハローワークへ提出します。
計画書には以下の内容を記載しましょう。
- 正社員化の予定日
- 賃金や労働条件の改善内容
- 正社員化の目的や計画の概要
- 正社員化対象者の氏名・雇用形態
この計画書は、助成金を受けるための正式な事前届出となり、提出前に正社員化を実施しても助成金は受けられません。
必ず正社員化の前に提出しましょう。
正社員化を実施する
計画書を提出した後、実際に非正規社員を正社員として登用してください。
この段階では、以下のポイントを守りましょう。
雇用契約を正社員として締結する
賃金や待遇を改善する場合は、計画書に沿った内容でなければなりません。
登録日や契約内容を正確に記録しておく
正社員化を行うことで、対象従業員の安定雇用が開始します。
6か月間継続雇用する
助成金支給の条件として、正社員化後6か月間、継続して雇用しなければなりません。
この期間中に退職や解雇があった場合、助成金の支給対象外になるため、正社員化後のフォローや、職場環境の整備を徹底しましょう。
申請書類を提出する
6か月間の継続雇用が確認できたら、事業主は助成金申請書類を提出します。
申請書類には以下が含まれます。
- 労働契約書の写し
- 正社員化コースの申請書
- キャリアアップ計画書のコピー
- 賃金台帳や出勤簿など、6か月間の雇用を証明する書類
提出は所管の労働局、またはオンライン申請システムを通じて行います。
審査・支給決定
- 提出された書類は労働局によって審査される
- 正社員化の実施や、継続雇用の確認がされる
- 審査に通ると支給決定通知が届く
- 指定口座に助成金が振り込まれる
審査期間は通常2〜3か月程度ですが、書類不備や追加確認が必要な場合は、さらに時間がかかることもあります。
このように、正社員化コースの申請は、
- 事前計画提出
- 正社員化実施
- 6か月継続
- 申請
- 審査・支給
という順序を守ることが必須です。
手順を間違えると助成金が受けられないため、計画段階からしっかり準備しておきましょう。
キャリアアップ助成金申請に必要な書類を確認しよう
出典:人気の補助金
正社員化コースの助成金を申請する際には、指定された書類が必要です。
書類の不備や不足があると審査に時間がかかるため、事前にしっかり準備しておきましょう。
就業規則・雇用契約書
正社員化の対象者が所属する事業所の就業規則や、正社員としての雇用契約書の写しを提出してください。
これにより、正社員としての待遇や勤務条件が計画書通りであることを証明します。
出勤簿・賃金台帳
正社員化後、6か月間の継続雇用を確認するため、出勤簿や賃金台帳の提出が求められます。
勤務日数や給与支給状況を正確に記録しておくことが、助成金受給の前提です。
転換後の賃金規定
正社員化によって変わった給与体系や、手当の規定を示す資料も必要です。
賃金アップや待遇改善が計画書通りに実施されていることを証明するための大事な書類です。
申請書類一式(キャリアアップ助成金用の様式)
所定の申請書類には、キャリアアップ計画書のコピーや、正社員化対象者の情報などを記載してください。
申請書は厚生労働省の指定様式を使用し、必要な添付資料をすべて揃えて提出しましょう。
キャリアアップ助成金・正社員化コースを活用するメリット
出典:昇進・昇格審査設計のポイントと留意点
キャリアアップ助成金 正社員化コースを活用することには、事業主にとってさまざまなメリットがあります。
単に助成金を受け取れるという金銭的な利点だけでなく、人材戦略や職場運営において長期的なメリットも得られるでしょう。
正社員化を検討している中小企業や事業所にとって、有効な制度といえます。
以下に、詳しいメリットを解説します。
人材の定着率が上がる
最も大きなメリットのひとつは、人材の定着率が向上する点です。
- パート
- 派遣社員
- 有期雇用契約
上記のような雇用形態においては、雇用期間や待遇に制約があるため、従業員は心理的に不安になりやすいでしょう。
その結果、長期的なキャリア形成が難しくなり、職場を離れるケースはよくあります。
しかし、正社員化コースを活用して従業員を正社員として登用すれば、雇用が安定し、従業員の将来の不安は軽減するでしょう。
安心して働ける環境は離職率を低下させるだけでなく、従業員の仕事に対する責任感や主体性の向上にもつながります。
特に中小企業では、経験豊富な人材を長期間確保することが、事業の成長に直結します。
助成金を活用しながら有期雇用社員を正社員に登用することで、定着率の高い人材を増やし、安定した業務運営を実現できるでしょう。
採用コストの削減
人材を新たに採用する場合、
- 研修費
- 面接費用
- 求人広告費
など、多くのコストがかかるものです。
たとえ採用しても、短期間で離職してしまうリスクもあり、企業にとって大きな負担となります。
しかし、キャリアアップ助成金を活用して、既存の有期雇用社員やパート社員を正社員に登用すれば、すでに業務を理解している人材を活用できるでしょう。
採用コストや研修コストの削減も可能です。
たとえば、ある製造業の中小企業では、期間社員として勤務していた従業員を正社員化しました。
これにより、毎年発生していた新規採用の広告費や、面接にかかる時間を大幅に削減。
結果的に、経費の圧縮だけでなく、社員が業務に慣れるまでの時間ロスも減少し、生産性が上昇しました。
助成金による資金的支援
キャリアアップ助成金は、単なる形だけの支援ではありません。ひとりあたり最大72万円(有期雇用から正社員への転換で生産性要件を満たした場合)の助成金を受け取ることが可能です。
キャリアアップ助成金を、
- 給与アップ
- 職場環境整備
- 福利厚生の改善
などに活用できるため、企業の財政的な負担は軽減するでしょう。
特に中小企業や零細企業では、正社員化による給与増加や社会保険加入の負担がネックになる場合があります。
しかし、キャリアアップ助成金を利用すれば、これらの負担を一定程度補填できます。
従業員の待遇改善をスムーズに進めることが可能です。
また、助成金を得るために計画的に正社員化を進めることで、企業の財務計画も立てやすくなるでしょう。
従業員のモチベーションアップ
出典:モチベーションを上げる方法は?下がる原因や維持する方法も解説
有期雇用や派遣社員として働いている場合、
- 待遇が不安定
- 契約が更新される
といった心理的ストレスを抱えながら働くことがあります。
しかし、正社員として登用されれば、従業員は会社からの信頼を実感でき、やる気や責任感が高まります。
従業員のモチベーションが上がれば、業務効率や生産性が向上するだけでなく、職場全体の雰囲気も良くなるでしょう。
たとえば、接客業やサービス業では、従業員の笑顔や丁寧な対応が直接売上や顧客満足度に影響します。
このことから、正社員化を通じて従業員の満足度を高めることは、企業の長期的な成長戦略につながるといえます。
組織全体が安定する
出典:モチベーションマネジメントとは?重要視されている背景や効果的に進める手順について解説
正社員化コースを活用することは、単一の従業員へのメリットに留まりません。組織全体の安定化にも寄与します。
正社員が増えることで、業務の引き継ぎや責任分担が明確になり、業務効率が改善するでしょう。
また、社員同士の信頼関係や協力体制が強化され、職場内のコミュニケーションも円滑になります。
特に、業務が複雑で専門性の高い職場では、正社員化によって熟練した人材を確保できることが、企業競争力の維持や成長につながるはずです。
まとめ
キャリアアップ助成金の正社員化コースを活用することには、
- 人材定着
- 資金支援
- コスト削減
- 組織安定化
- モチベーション向上
といった多面的なメリットが期待できます。
単なる助成金制度としてだけでなく、長期的な人材戦略の一環として活用することで、中小企業にとって非常に価値のある制度となるでしょう。
おわりに
正社員化を検討している中小企業にとって、キャリアアップ助成金は、
- 人材定着
- 採用コスト削減
など、資金面での後押しになる大きな制度です。
申請の際は、書類の準備やスケジュール管理を丁寧に行いましょう。
計画段階から正社員化後の継続雇用までをしっかり管理し、賢く助成金を活用すれば、企業と従業員の双方にメリットをもたらします。
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監修者からのワンポイントアドバイス
キャリアアップ助成金には様々なコースがありますが、正社員化コースを活用すると事業主にとってさまざまなメリットがあります。人材の採用コスト低減、人材の定着などの事業主側のメリットに留まらず、従業員にとっても意欲向上などのメリットがあります。本助成金の活用をお薦めさせて頂きます。

